同人誌印刷 トム出版 左近 右近
左近・右近
今日は12月23日。
明日はクリスマス・イブだ。
今年もおおつごもりが、すぐそばまで迫ってきた。
子供のころに感じたお正月とは、
何か幸せ感がいっぱいで、
友達と雪の中で戯れたり、本を読んだり、
また、お正月映画のロードショウ見に行ったり。
たくさん夢を感じたものだが、
一方で、そんな太平楽なウキウキした気分ばかりの
お正月でもなかったように思う。
お正月になると、歳の数だけ雑煮を食べよ、とよく言われる。
お前、幾つになったのか ?
うむ、そうか、だったら、もうぼつぼつ一人前だな。
今年から農作業はお前もやれそうだな。
、、と、、いやな事をいわれそうな気がいつもしていたのだ。
しかし、子供ではあるが、昔はいかに子供であっても、
遊んでばかりいる訳にはいられなかった。
当時読んだ少年雑誌に「左近・右近」という
短編があった。
たしか、吉川英治著作だったと思う。
そこに、とても心に染みることが記されていた。
うる覚えなので、正確には書けないが、
だいたい次のような内容だったと思う。
ーーーーーー
長州の久坂玄瑞は、左近・右近の二人の兄弟に向かって、
左近、おまえは今年でいくつになる ?
はい16になりました。
右近は?
14
です。
うむ、16歳か。では左近はもう立派な大人だ、
私が元服の儀式をとってあげよう。
と、玄瑞は言って、左近の前髪を切り落とし、きれいに曲げを
結い整えた。
さぁ、今日から左近は大人だぞ、玄瑞はそういいながら、
元服のしるしに朱の盃に神酒を並々と注いだ。
左近は、それを一口含んだ、熱いものが胸の中をしみ通っていった。
男となった儀式に、左近は目元を赤く染めていた。
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昔の子供は16歳でもう大人としての責任を持たされていたのだった。
それからというもの、12月の暮れになると、
子供の夢をひたすら控え、家の仕事をよく手伝ったことが、
ついぞこのあいだのように思い出される。