同人誌印刷トム出版 秋月 (その1)
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秋はお月さまの季節である。澄んだ空気に月光が冴えざえと光を放つ。
秋はお月さまが一段と美しく見える季節だ。
月光の曲、月光のノクターン、ムーンライトセレナーデ、ピアノソナタ「月光」。月に因んだ名曲は多い。
俳句の世界でも月はとてもスタンダードな季語で、
名月や〜。月づきに。月出づる。待宵の月。
など雅味に富んだものが多いが、秋の季語は他の季節にくらべ全体的に少ないように思われる。
その中でも燦然と光っているのが「月」である。
私はその「月」をわざわざ見に出向いたことがある。
気候のやさしい秋の月などではない。
厳寒の、毛髪の天辺から足の指先まで、バりバリと凍りつくような厳寒の深夜に、である。
今から1300年の昔、軽の皇子(かるのみこ)『後の文武天皇』は安騎の大野に供をひきつれて遊猟に行かれました。
都を遠く離れ、小雪降る凍りつくような巻狩の野原で、ススキや小竹を地面に敷いて一時の旅宿として仮眠をとられました。
今は亡き父親(草壁の皇子)に、以前ここへ連れてきてもらったことを思い出しながら。------------
ひむがしの 野にかぎろいのたつ見えて かへりみすれば 月かたぶきぬ
柿本人麻呂----
とつづきます。
振り向いてみると後ろの熊ケ岳の山頂に、月が落ちかかっていた、、、。
というのです。
なんと感動的な叙景でしょう。私はこの月に心惹かれ
1300年前の旧暦の十一月十七日、満月の夜。この歌が詠まれた同日同時刻。
それにに合わせて、私は
「かへりみすれば 月かたぶきぬ」
を見に行ったのです。
行先は奈良県大宇陀町かぎろいの丘。
つづく
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