同人誌印刷 トム出版   東大寺の篝火

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明日は大晦日である。もう10年前くらいの話になるが、

おおつごもりの深夜、私は必ず東大寺の初詣に参詣するのを年末年始の通例としていた。

ご存知、あの大仏殿にお参りするのである。

深夜11時半くらいになると、南大門の大戸の前あたりは、

開門待ちの人々で一杯になる。

奈良の冬は底冷えがする。でも皆んな、そんなこと意とも解さず、

ワイワイガヤガヤ~、まことに楽しそうに開門を待つ。

しばらくして、除夜の鐘、長一声、、、。ズド~ン。

東大寺国宝の腹に堪えるような鐘の音。


南大門の大戸がゆるゆる開く。

待っていた人たちは、この鐘の音を合図に一斉に中へと雪崩れ込む。


門内に踏み込んでまず目を見張るのは、

参詣道の両サイドにずらりと並ぶかがり火の揺らめき、

そして、前方の大仏殿の中央に大仏さまのお顔が灯りにぼんやり透けている。

まことに幻想的で「爛柯」の如く、深夜の露に立ち濡れしつつ、いつまでも見飽きない。

私はこの雰囲気の魅力に惹かれ、それからずっと大仏さまへの

参詣がつづく事になった。


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