同人誌印刷 トム出版 小峠から安騎野へ (完)

小峠から小径を下りていく途中、しばらく山鳥の案内を乞うた。

ヨチヨチした歩き方がまことに滑稽で、ほんとに楽しいひと時を

過ごさせてもらった。が、



しかし山鳥君にとっては、とても気が気ではなかっただろうと察すると、

それもまた申し訳なく思う次第である。




下り坂が次第に緩くなり、道幅も少しづつ広くなって来た。

大宇陀の景色もだんだん目線の高さに近づいてくると、

谷の両側に立ち並ぶ民家の様子がはっきり見える。




この分だとかぎろひの丘まで、あと2Kくらいだろう。、、

と推測していると、先ほどまでずっと山鳥君のことばかり

頭の中にあったものだから、肝心なことをついぞ忘れていた。




軽皇子が1300年の昔、

   安みしし 吾ご大君 高照らす 日の皇子 神ながら 神むさびせすと

   

   太敷かす 京をおきて 隠国の 初瀬のやまは 真木立つ

   

   荒き山道を 岩が根 禁樹押しなべ 坂鳥の朝越えまして





と、この長歌に書かれているとおり、

多分あの大峠、熊ケ岳から経ケ塚山、小峠のラインのいずれかを

安騎野へ越されたと思うのだが、




いずれにしても、1300年もの昔に

「 坂鳥の朝越えまして 」

とあるとおり、




私も実際坂鳥に出会うことができたその驚きと興奮、、。

それを改めて思い起こし、



頭の中でいろいろ想像する幸福感に、

ここまで来た甲斐があったと、その嬉しさを味わいながら、

ひと山越えてきた疲れも忘れて、

私は、終着地点であるかぎろひの丘に急いでいた。



おわり





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