同人誌印刷 トム出版 八甲田に雪
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八甲田に雪。
このところ、夜ともなると随分寒くなってきた。
昨夜は八甲田山麓に80センチの雪が積もったそうだ。
ずっと昔、この八甲田山を縦走したことがある。
縦走と言っても初夏の尾根伝いだからなんてことはない。
途中からバスで縦走 ? したりして、真にいい加減な山歩きである。
しかし、厳寒の季節はそうはいかない。
丁度そのころ、「八甲田山死の彷徨」新田次郎 著
という小説が話題になっていたから、私はそれに触発されて現地に旅したという訳である。
山腹の途中からバス道に出てテクテク歩いていると、何やら変なものに気がついた。
道路のいたる所が切通しになっているのだが、その上のずっと高い所に、
白樺やブナといった背の高い潅木がまばらに
突っ立っている。
まっ、それはいいとしても、見ると、その樹木に何か変なものがぶら下がっているのだ。
白い板切れみたいだった。
あちこち景色を眺めながら歩いていると、バスが通りかかったのでそれに乗せてもらい、
心地よい揺れに、いつの間にかそれも忘れて、第一の目的地である蔦温泉に着いてしまった。
後で訊いてみると、あれはスキーコースの目印という事であった。
なんと、冬になるとあの深い切通しも、バス道も、うず高く積もった雪に埋め尽くされてしまうのだ。
私は厳寒の八甲田を想像しながら、あの小説、
直立したまま仮死状態で発見された青森5連隊後藤房之助伍長のことをだぶらせると、
今でも、とても、やるせなくなってくるのである。
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