同人誌印刷トム出版 蕪村
薮入り
つい先日、、、
大阪市都島区というところに所用があって、ちょいと出かけることとあいなった。
その都島という土地は、大阪市の北端に位置しているのだが、南方面には京橋という有名な
繁華街を抱えており、またその背後には静かな住宅街が立ち並んだりしていて、
とても便利で住みよい環境にある街である。
さて、その一番北方向であるが、そこにはご存知、淀川というあの大河が流れていて、
大阪市内へ水を送り込むための設備というか、
いわゆる閘門という取水口が取り付けられている。
丁度その取水口の切れ込んだ堤防の片隅に、お目当てのものがあった。
とても大きな石碑である。
〜 春風や堤長うして家遠し 〜 蕪村
古びた文字が刻まれていた。
このあたりはずっと昔、江戸時代は毛馬村と称していて、鄙なる村邑だった。
この村から若い娘さんや、幼い子供たちが大阪市内の商家に奉公に出かけたのであろう。
蕪村はここで生まれたが、少年時代にこの土地を離れ、以後一度も帰郷しなかった。
その蕪村が、故郷懐かしさの余り、頭の中で当時を偲んで詠んだ歌らしい。
「薮入り」になると、商家の旦那からお許しがもらえ、
奉公人である小娘や、年端もいかない子供が、大阪から遠い道のりを歩いて家に帰ってくる。
その故郷が次第に近づいてくる嬉しさと。
それにしても、この堤防の長いこと、、、。
子供たちは思わず嘆息したのだろう。
私は石碑を何回も読み返した。
父母に早く会いたい、、。はやる子供の心がとてもよく出ていて、
思わず涙がこぼれ落ちそうになった。
今日は一月十六日 薮入り である。
http://d.hatena.ne.jp/tomshuppan/20080116