同人誌印刷 トム出版 言問橋
この東京大好き人間が、ずっと昔東京に住んでいたころの事で、
まことに陳腐な話になるが、何卒ご寛恕ねがいたい。
最近では東京といえばコミックシティ、コミックマーケットのことで
すぐ胸がふくらむが、
さて、ひと昔前はというと、けっこう東京遊びに耽溺したブラブラ
人間だった。
そのブラブラ君が故郷 ( 大阪 ) 懐かしさに、ふと台東区から墨田区の
方へ足を向けたことがある。
な、なんで墨田区に大阪と何の関係があるのか?
と訊かれるとチョット困るが、
ふむ、墨田区に無論「大阪」は関係ないけど、
あの関西の香りというか、
墨田区に関西の気配があるらしい。と思ったからだった。
さて、その台東区花川戸と墨田区向島の間に言問橋という橋が架かっている。
ご存知あの「伊勢物語」に出てくる--いざ事とはん都鳥--
の「言問い」である。
あの業平が、都から遠くはなれて来たその寂しさに、
水辺で遊ぶ都鳥に故郷「京都」のそを聞きたくて問いかけた歌だが、
このブラブラ人間も歌の心境に共鳴したわけで、ここ、言問橋まで
その「そ」を聞きたくて赴いて来たという訳だった。
あの啄木もまた、業平のように
ホームシック屋さんだったかも知れない。
〜ふるさとの訛りなつかし停車場の
人込みの中に そを聞きに行く 〜 啄木