田沢湖の思い出 (その4) 僕ちゃんの宝物
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二人は赤い目をこすりながら、おい、来たぞ。どうする。顔を見合わせた。
約束したのだから、宝物とやらを見てやらなけりゃ、嘘をつくことになるだろ。
と彼は言った。
そうだなぁ、あんなにナツイテくれてるし。
おーい僕ちゃん、いま行くからな、、。
二人は浴衣の帯を締めなおして廊下へ出た。
僕ちゃんはとても嬉そうに私たちを見上げ、ひょいと私の浴衣の袖を掴んで、
「こっち、こっち。」
と、ぐいぐい引っ張っていく。
着いた先きは本館母屋の納戸だった。
うす暗い六畳くらいのあまり広くない部屋で、40Wの裸電球が一つぶら下がっていた。
僕ちゃんはここへ座れという。そこは二枚引戸の板戸の前だ。
見ると、とても大きい板戸で、一枚が畳一枚分はゆうにある。
それが二枚引き違えている。黒光りのしている重量感のあるしっかりした板戸だった。
そこはどうも押入れらしい。
僕ちゃん、この押入れの中に何かあるのかい?
私は、板戸の前の畳の上に座ってあぐらを組み、そう尋ねた。
つづく