田沢湖の思い出 (その4)  僕ちゃんの宝物

tomshuppan2007-09-07

同人誌印刷 トム出版 http://www.tomshuppan.co.jp/
二人は赤い目をこすりながら、おい、来たぞ。どうする。顔を見合わせた。
約束したのだから、宝物とやらを見てやらなけりゃ、嘘をつくことになるだろ。
と彼は言った。

そうだなぁ、あんなにナツイテくれてるし。

おーい僕ちゃん、いま行くからな、、。

二人は浴衣の帯を締めなおして廊下へ出た。

僕ちゃんはとても嬉そうに私たちを見上げ、ひょいと私の浴衣の袖を掴んで、

「こっち、こっち。」

と、ぐいぐい引っ張っていく。

着いた先きは本館母屋の納戸だった。
うす暗い六畳くらいのあまり広くない部屋で、40Wの裸電球が一つぶら下がっていた。

僕ちゃんはここへ座れという。そこは二枚引戸の板戸の前だ。
見ると、とても大きい板戸で、一枚が畳一枚分はゆうにある。

それが二枚引き違えている。黒光りのしている重量感のあるしっかりした板戸だった。

そこはどうも押入れらしい。
僕ちゃん、この押入れの中に何かあるのかい?

私は、板戸の前の畳の上に座ってあぐらを組み、そう尋ねた。


つづく


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