田沢湖の思い出 (その2)僕ちゃんの宝物

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逢う魔が時になった。そろそろ田沢湖ともお別れである。

山の舗道を抜け、ゆるゆるハンドルを切りながら二人は今夜の宿泊先、駒ケ岳〇〇旅館に向けて車を進めた。
あたりは、冬になるとスキー場に一変するらしく、一帯は草原の丘が幾重にも襞を連ねている。

ようやく下界へ降りた。田沢湖線の線路をまたぐと、もう普通の民家の家並みが続いていた。
この街路を抜けて左へ折れると目標の旅館だ。街路に人影はない、絵画にでも出てきそうなとても静な風景である。

ふと前方みると男の子が一人、向こうむきにトコトコあるいている。
白いシャツの小学校二.三年生くらいの男の子だった。
 
後ろからゆっくり車を近づけ、、並んで停めた。

僕、どこまで行くの? 同じ方向だったら乗せてあげるよ。
助手席の彼が声をかけた。

「うん! おじちゃんたち 東京から来たの? 」

いやぁ、東京よりもっと遠いとこから来たんだ。

「ふーん、、それでどこまでいくの? 」

この先の〇〇旅館ってとこ。

「じゃ、のせて! 」

即答が返ってきた。おかっぱ頭の色の白い可愛い子である。


つづく


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