同人誌印刷 トム出版の田沢湖の思い出
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田沢湖の思い出
あれは暑い夏の盛りのことだった。
私は同人の親友、KGさんを訪ねて盛岡に遊びにいった。
なにしろ初めての土地だから少々不安だったが、
無事、彼と久しぶりにJR盛岡駅で対面できて、その杞憂はうそのようにけし飛んだ。
それから、あちこち物見遊山の観光めぐりをしようという話になって、駅前でレンタカーを借りた。
第一の目標は田沢湖。
盛岡から西へ西へ、雫石を過ぎて秋田に入り八幡平。そこから山腹の羊腸をゆるゆる抜け、少々遠回りになったが、ようやく目的地に着いた。
車窓からふと見ると、湖畔にあの有名な辰子像が立っている。
二人は早速車から出て水辺のベンチに腰をかけ、売店で買ったアイスクリームを舐めながらよもやま話に興じた。
「なんでもこの湖は日本一深いんだって」
「うむ、そうだな、深度423メートルだってな」
私はさっき見たばかりの案内表示板に、そう書いてあったことを彼に告げた。
なるほど、そう思って見詰めていると、湖面はどこまでも蒼く透明で、ついには引き込まれそうになるような錯覚さえ覚えた。
ああ、、ちょっと疲れたなぁ。
二人は申し合わせたように生あくびをした。
長時間のドライブは頭の芯が疲れる。
「疲れたなぁ」
と言うなり、彼はそのままベンチにゴロっと横になった。
「車のエアコンの中で一眠りするか」
私はそういって駐車場に停めてある車のところに戻り、後部座席でゆっくり足を伸ばして横になった。
、、、、しばらくして(5、6分も経っただろうか)
車のドアがサッと開いた。
なぬ?
私はもそもそと体を起こし、開いたドアの方を見た。
むむ、外に背の高いサングラスの兄ちゃんが二人。
指で、降りてこい、と合図している。
私は、一瞬ギョっとしたが、ま、仕方がない。
こんな風雅な土地にもチンピラがいるのか、
ちょっと落胆した気分を引きずりながら、
よし、相手になってやる。私はキッパリと覚悟を決めた。
私は車から降りるなり、
「おい、何の用だ」
拳を固め、肩をいからせ、相手に先制の言葉を吐いた。
相手の二人は、怪訝そうに顔を見合わせ
「?、何の用だって??。おたく、この車、誰のんと思ってんの」
「なな、なにっ、??、、誰の車だって??見りゃ分かるやろ! 私のレンタカーじゃん」
そう呟きながら改めてよく見ると、、、」
車名・型式・色まで全く同じ、、。だが、ナンバーが全然違う。
うむ、レンタカーじゃない。自家用車だ。しまった、と思ったがもう遅い。
げっ、顔色、真っ青。
「す、すみません。ごめんなさい。」
異変に気づいた彼が戻ってきて、そばで腹を抱えて大笑いしている。
「人の車に入りこんで寝ていたのか、、、ハッハッハッハ、」
つづく
同人誌印刷 トム出版の田沢湖の思い出
田沢湖の思い出
あれは暑い夏の盛りのことだった。
私は同人の親友、KGさんを訪ねて盛岡に遊びにいった。
なにしろ初めての土地だから少々不安だったが、
無事、彼と久しぶりにJR盛岡駅で対面できて、その杞憂はうそのようにけし飛んだ。
それから、あちこち物見遊山の観光めぐりをしようという話になって、駅前でレンタカーを借りた。
第一の目標は田沢湖。
盛岡から西へ西へ、雫石を過ぎて秋田に入り八幡平。そこから山腹の羊腸をゆるゆる抜け、少々遠回りになったが、ようやく目的地に着いた。
車窓からふと見ると、湖畔にあの有名な辰子像が立っている。
二人は早速車から出て水辺のベンチに腰をかけ、売店で買ったアイスクリームを舐めながらよもやま話に興じた。
「なんでもこの湖は日本一深いんだって?」
「うむ、そうだな、深度423メートルだってな」
私はさっき見たばかりの案内表示板に、そう書いてあったことを彼に告げた。
なるほど、そう思って見詰めていると、湖面はどこまでも蒼く透明で、ついには引き込まれそうになるような錯覚さえ覚えた。
ああ、、ちょっと疲れたなぁ。
二人は申し合わせたように生あくびをした。
長時間のドライブは頭の芯が疲れる。
「疲れたなぁ」
と言うなり、彼はそのままベンチにゴロっと横になった。
「車のエアコンの中で一眠りするか」
私はそういって駐車場に停めてある車のところに戻り、後部座席でゆっくり足を伸ばして横になった。
、、、、しばらくして(5、6分も経っただろうか)
車のドアがサッと開いた。
なぬ?
私はもそもそと体を起こし、開いたドアの方を見た。
むむ、外に背の高いサングラスの兄ちゃんが二人。
指で、降りてこい、と合図している。
私は、一瞬ギョっとしたが、ま、仕方がない。
こんな風雅な土地にもチンピラがいるのか、
ちょっと落胆した気分を引きずりながら、
よし、相手になってやる。私はキッパリと覚悟を決めた。
私は車から降りるなり、
「おい、何の用だ」
拳を固め、肩をいからせ、相手に先制の言葉を吐いた。
相手の二人は、怪訝そうに顔を見合わせ
「?、何の用だって??。おたく、この車、誰のんと思ってんの」
「なな、なにっ、??、、誰の車だって??見りゃ分かるやろ! 私のレンタカーじゃん」
そう呟きながら改めてよく見ると、、、」
車名・型式・色まで全く同じ、、。だが、ナンバーが全然違う。
うむ、レンタカーじゃない。自家用車だ。しまった、と思ったがもう遅い。
げっ、顔色、真っ青。
「す、すみません。ごめんなさい。」
異変に気づいた彼が戻ってきて、そばで腹を抱えて大笑いしている。
「人の車に入りこんで寝ていたのか、、、ハッハッハッハ、」
つづく
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